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制作について 2006年

安部典子

「カラッポの自分」という視点に気付いてから、線を使った作品を作りつづけている。"Works of Linear-Actions"と題された、'99年から始まった作品シリーズは、ある種の地図を形作っているように見える。例えば血液が体内を流れるように、大地に川が流れる。そしてその川が地球上に軌跡を残すように、紙の上にドローイングの線を引いていく/カットした層を積み上げていく。


それはシンプルな行為ではあるが、微妙に歪む線をそのまま受け入れ、それに沿って次の線を引いて/カットていく。そこに現れる、ゆったりとしたフォルム、それが人間の感情の機微であったり、くせ、またその人のバイオリズムそのものであったりする。それこそがオリジナリティであろう。'99年以降作品は、すべてフリーハンドになった。


作品の形態は、支持体と、そこに施す線の行為によって成り立っている。

現在は、白い紙を使ってカッティングに取り組み、ジオグラフィックな世界観を表出させようとしているが、トレーシングペーパーを使って層をなす形態の立体ドローイングも並行し、有機的な形の秩序を探っている。また同時に、既製品の地図帳や、時間軸の象徴としての列車の時刻表など、実際に使われている本にカッティングを施す試みも行っている。

使う本によってそのメッセージ性が多様に顔をちらつかせ始め、行為は同じでも、受け取られ方が違ってくる。それは私達が時と場所、民族性によって価値を与えられてしまう不自由さにも重なり、その点でも興味深い素材である。いわば、コラボレーションとして素材と自分との関係を捉えている。


2006年の個展以来、“フラットファイル・グローブ”という、引き出し付きのスチールキャビネットを使った、新しいタイプの作品に取り組んでいる。それは人間の体、また、連続した時間の流れと現在がクロスするメタファーとして。それは工業製品と、有機的なカッティングの線のコラボレーションとなる。さらに、切り抜いた形も使うようになった。題して”スカルペーパー(Sculpaper)”。作品は日々増殖していく。


線を引く、カットしていくとき、徐々に変化し続ける形はとても興味深い。“アナザージオグラフィー”としてそれ自体の存在感が増大してくる。ネガの部分が私自身であり、ポジの部分が私という人間を構成している物理的環境ともとれる。

形そのもの、そのエネルギー、ニュアンス、感覚、そういった自分の五感を使い、もっともっと形にピュアに進んでいこうと思っている。私個人の個という部分と、自然の一部としての人間と、さらに我々を取り巻く自然界とが繋がる線は、ディティールの宇宙、その発見からなのかもしれない。


© 2023  Noriko Ambe and ARS New York

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